「共謀罪の趣旨を含む組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案について撤回を求める意見書」に対して反対の立場から討論を行います。
日本は2019年にラグビーのワールドカップ、翌20年に東京オリンピック・パラリンピックを開催します。これらの国際大会を断じてテロの標的にさせてはなりません。そのために必要なことは、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の締約国になることです。締約国になると犯罪人引き渡しや捜査共助、情報交換も進みます。テロリストは国境を越えて活動します。締約国にならないと日本が国際協力の「穴」になる事も心配されます。
締約国は、すでに187カ国・地域に上ります。締約国になっていないのはG7(日本、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ)では日本だけ。国連加盟国の全体でも日本を含め11カ国にすぎません。
「テロ等準備罪」法案は、TOC条約加盟に必要な国内法整備であります。
本意見書は、大きく三点について指摘し反対の理由といたします。
「思想及び良心の自由を侵害しかねない法案」
内心の処罰になるとの批判に対し政府は、犯罪の「計画」は具体的・現実的であることが必要で、さらに、心の中で考えただけでなく、その意思が表にあらわれない限り処罰できないと説明しています。これに関し、参考人として意見を述べた中央大学大学院の井田まこと(良)教授は「計画行為であれば、組織的犯罪集団の構成員らが一定の重大な犯罪実行について、具体的かつ現実的に相談して決意を固めるというのが内容であり、犯罪的な意思が表にあらわれる」「組織としての犯罪的決意が固まったことが疑いを入れない程度の確実性を持って証拠により証明されなければならない」「計画」を立証するだけでも「相当に高いハードル」と述べています。
「採決を強行した」
衆議院法務委員会においても、これまで30時間以上にわたって審議を行い、10人の参考人から意見を聞き、しっかり議論してきました。審議も熟したので手続きにのっとり質疑を終局し、採決が行われました。また同委員会は、政府や最高裁に対し、法律施行に当たって適切な運用を求める付帯決議も採択。公明党の主張などを受け、対象となる犯罪は676から277に限定されるなど、要件が厳格化されています。
「国連プライバシー権に関する特別報告者の書簡」
法改正案に対し、国連人権理事会の特別報告者が「プライバシーの侵害を懸念する」とした書簡を安倍晋三首相に送付したことについて、6月8日の参院法務委員会で公明党議員が、書簡の内容は法案やTOC条約に不正確な理解があり、「事実と異なる」と指摘し、国連の評価を改めて確認したところ、外務省の水嶋光一大臣官房審議官は、「国連は累次の国連総会決議、安保理決議で繰り返し、日本を含む数少ない未締結国に対してTOC条約の早期締結と実施を求めている」と強調。またTOC条約のフェドートフ事務局長は、5月2日の岸田外相との会談で日本の条約締結に期待を寄せるとともに、5月29日にも、同法案の衆院通過を歓迎する声明を発表していると答弁しました。
そもそも、法案審議を遅らせている民進党は、民主党時代、2009年の衆院選前に発表した政策で共謀罪を導入することなく条約に入ると公約し政権に就きました。ところが3年3カ月の政権期間中、条約に加盟できませんでした。国民の不安を煽るだけでなく、公約したにもかかわらず、実現できなかった理由を国民に説明し、法案に反対するのであれば、テロから国民を守るにはどうすべきか具体的対案を示すべきであります。
以上 申し上げまして、反対討論を終わります。
以下、佐々木さやか参議院議員 ブログより(2017.6.21)抜粋
第193回通常国会では、給付型奨学金の創設や、年金受給資格期間の短縮、テロ対策など、国民生活に重要な成果を得ることができました。
テロ等準備罪では、民進党と共産党は委員会での審議を事実上拒否。丁寧に委員会を進めたにもかかわらず、「廃案ありき」であらゆる抵抗手段を尽くし、委員会での審議が困難に。委員会採決を省略する「中間報告」で、本会議での質疑、採決を行いました。
今後は、早期に国際組織犯罪防止条約を締結し、東京五輪・パラリンピックに向け、テロを未然に防ぐ体制を整えていくことが重要です。