一日目
「議会BCP」策定の経緯について
- 平成25年に「議会基本条例」が策定され、制定から3年が経過したことで、検証を実施。平成29年の一部改正時に、第二条に災害等の発生時における議会の迅速な対応について別に定める事を明記し、平成30年4月に議会として、「災害等の発生時においても迅速に対応する必要があると認めるものについて、継続してこれを担い、その責任を果たすために、必要な組織体制や議会議員の役割」などを定めた「堺市議会業務継続計画(議会BCP)」を施行した。議会力向上会議での会議6回と、同ワーキンググループでの6回の議論によって策定した。
「議会BCP」について
- 対象災害発生時の議員の活動原則と議会の対応原則を示している。
- 議会の対応原則では、議会としての対応を一元化するとともに、当局との協議、連絡、調整等を行うための組織として「対策会議」を設置することとし、設置基準、会議の構成、所掌事務などを明確にしている。
- 初動対応として、議員本人の被災状況確認などについては、電話、メール以外にもSNSについても柔軟に利用を可能のとしているのが特徴。
「議会力向上会議」による取り組みについて
- 議会力向上会議は、議会の権能を高め、議会力向上を図る為、継続的な議会改革に取り組む為に設置されている。各会派の代表および会派に属さない議員の代表者で構成される。決定事項は議会運営委員会において確認がされる。
- 人口83万人の政令指定都市である堺市。議員定数は2年前に52から48名に減。
- 毎年年頭に、議会としてのロードマップを定める事で、全議員での審議スケジュールの目標が明確になっている。決められた期間内で結論が出ない場合は、次年度へ持ち越すなどし、決めた期間の中で結論を出す努力がなされている。
- 討論採決の前に「委員間討議」が活発に行われている。「委員間討議」は事前通告が努力義務とされている。市民にとっては論点が明確になりわかりやすいと評価を得ている。
- 議会報告会は、市役所で行われており、1部は議場で、2部は委員会毎にそれぞれのテーマで行われている。市内の高校生を対象とした報告会も実施しているが、9年目を迎え、参加者の減少や、参加者の固定化など懸念事項もあるとの事。
所感
災害はいつ発生するかわからない。議会は、地域の多くの情報を収集する大切な役割を持つ一方で、災害発生時において、議会で情報を一本化して市の対策本部へ要請するなど、ルールが決まっていないと、対策本部をかえって混乱させ、市民への対応を鈍化させることにもなりかねない。全議員の力を、市民の安心安全の為に無駄なく活かすために、現在の議会基本条例検証の作業の中で、対応マニュアルを策定する必要を改めて感じた。
議会改革について議会運営委員会ではなく、常に議論が行える「議会力向上会議」を設置して積極的に改革に取り組まれていた。ロードマップを確認して進める方法は、慎重審議の上にも、結論を出す議会としては、とても重要な取組だと感じた。検討をしたい。また委員会討議も能動的に行われており参考になった。本市の場合は、陳情などの議論の導入として、委員間討議を先に行った方が、効果が大きいのではないかと考える。
二日目
- テーマ/場所: 「議員定数等に関する調査・議会基本条例の改正・市民と議会の懇談会」について
- 場所:京都府京丹後市
- 期間:2020/01/16(1日)
- 視察内容:
議員定数等に関する調査について
- 京丹後市は2004年、旧6町が合併して誕生。合併前の旧町時代の合計議員定数計94人。合併時には定数を30人としている。
- 改選前には必ず、特別委員会を設置し見直しを実施している(削減ありきではない)
- 見直しは、4年に一度の議会の評価という意味もあると捉えている。
- 市民アンケートの結果や、まちづくり委員会との懇談会を踏まえ決定へ。
- 議員の資質向上、議員・議会活動の見える化の必要性について意見がでた。
- アンケートでは、55%が多い、40%が適当、5%が少ないという結果となった。
- 議員報酬は、生活を保障し専門性の高い議員を増やしてはという意見もあったが、京丹後市の平均賃金と比較すると悩ましい。
- 議員定数を削減するという考えの市民の声の中には、その場合は報酬を増やしてはどうか、専門性をもった人が議会に選ばれるべきではないかという意見もあった。
- 本年4月市議選を前に、現行の議員定数22人を2人削減して20人にする条例改正案を昨12月、賛成多数で可決した。(参考:人口5万6千人)
議会改革・活性化の歩みについて
- 平成18年9月、議会の活性化と改革の為の議会に関する見直し・検討を開始。
- 平成19年12月、8項目をとりまとめ、「議会基本条例」を策定(翌年施行)
- 平成22年、議会改革度ランキングにおいて、全国でトップの評価を得るも、住民の評価との落差を感じ、更なる改革の検討を開始。
- 平成24年10月、「議会活性化特別委員会」を設置。
- 平成27年2月、「京丹後市議会政務活動費の交付に関する条例」可決。
- 無駄な支出を抑制するため年度終了後の実績額による「完全後払い方式」を導入
- 平成27年2月、議会基本条例の一部改正。
改革・改正の内容
- 反問権の行使については、年間5回ほど行われている(要望の予算の裏付けなど)
- 議員間討議の実施
- わかりやすい予算・決算資料(政策形成過程の資料提出など)
- 議決事件の改正(基本的には長期総合計画に含まれるもの)
- 現在は、男女共同参画を乗降で明文化するための議論中
「市民と議会の懇談会」について
- 議会報告会を、広聴の意義を強め「市民と議会の懇談会」と改めた。
- 通常の告知に加え、防災行政無線による広報も行っている。
- 内容は、議会報告20分、テーマを設定しての意見交換40分が、基本スタイル。
- 合併前の6町に出向き、年4回、複数会場に別れて実施している。
- 参加者の減少や固定化から、最近では、テーマや団体を絞って実施も行っている。
- ワールドカフェ方式を採用し、より多くの意見が聴けるよう努めている。
- 発表者は、原稿を読まずに自分の言葉で伝えるよう努力をしている。
- 各会場で出たご意見の取扱いなどは実行委員会で検討がなされ、議会で定めた「政策提言フロー」に従い、所管の委員会で検討がなされる。
所感
議員削減に限らず、四年に一度、議会の評価を得るという意味を持ち、見直しを特別委員会で行っていることは、市民にとってわかりやすく素晴らしい。実態としては、6町が合併した経緯もあり、市議会の仕事内容を市民に見える化する事を大切にしている。報酬については、実際に、見直しに市民の理解を得る事は難しいと考える。質の向上と立候補者の確保による適正な選挙は、今後益々全国で大きな課題となる事を感じた。
「議会改革度ランキング」でトップの評価を得たにも関わらず、市民の認識とのギャップに真摯に目を向けて、更に取り組みを進められたことは素晴らしいと感じた。政務活動費の無駄な支出を抑制するため「完全後払い方式」を全国に先駆けて導入している点についても、市民目線の改革であり評価が高い。改めて提案を検討したい。京丹後市議会には、会派控室が無く、大部屋が用意されている、風通しの良い議論も納得ができる。
一方的な報告会ではなく市民の声を聴かせていただ、「市民と議会の懇談会」とされている。回数や会場を増やす事で、会場ごとの人数は、極端に多くはならないが、それぞれ丁寧な意見交換ができる事は、利点であると感じた。頂いた意見について、ダイレクトに政策に結びついたものは少ないようでしたが、取扱いプロセスが明確化されている事については、本市議会でも一考の余地がある。回数を増やすには原稿の調整が無くす事も必要。